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田中英和先生のワールドダンス

コラム&本誌企画

ウォークの後の”フェザー”に秘訣あり SF(1)

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今年もまたあっという間に終わりを告げようとしています。年の瀬を迎えて皆さまいかがお過ごしのことでしょう。この一年を振り返ってみますと、良かったこと、楽しかったこと、残念に思ったこと、悲しかったこと、色々な出来事が思い起こされます。天災で大変な思いをされた方もいらっしゃいます。そんな中でもダンスをしていて本当に良かったと思える瞬間が少しでもあれば、ダンスに携わる者としても救われる思いです。ダンスを通じて、ダンスを愛する仲間が集まって、また前向きに新しい年を迎えたいものです。
さて、この12月と言えばパーティシーズンでもあります。今年もホテルやイベントホールなどでダンスパーティが花盛りだったことでしょう。最近のダンスタイムの傾向ですが、ワルツやタンゴ、ルンバやチャチャチャが人気のあるダンスであろうと思いますが、4拍子のスローなテンポで踊られる社交ダンスの典型とも言えるブルースは影を潜め、もっぱらスローフォックストロットが踊られるようになってきています。現代はスポーツダンスという健康志向の時代でもあり、ブルースと比べるとやはり躍動感や運動量が格段に大きいスローが好まれるのは当然の流れなのでしょう。

ウォークの後の「フェザー」は〝見えないロープを手繰り寄せるように″踊る
ウォークとフェザーの基本動作をベースに、力強くもスムーズなムーブメントを信条とするスローフォックストロットは「スウィングダンスの基本」に位置付けられています。4拍子のスローなテンポで演奏されるスウィングやジャズ系の音楽に合い、ゆったりとしたムーブメントの中にもリズムが十分に感じられるダンスであり、それこそ「玄人好み」のダンスと言えます。
スウィングダンスの「基本の動作」は、ウォークの後に「ターン」をするワルツ、ウォークの後に「シャッセ」をするクイックステップというように、ウォークの後の違うパターンの変化を楽しむように構成されています。スローフォックストロットで言えば、ウォークの後に「フェザー」を踊るということになります。そのウォークの後の変化のパターンは違えど、そこに共通するのは、ウォークをした第1歩の足を次の足が加速をして通過するということです。すなわち、この第1歩目のウィークをしっかり、たっぷり踊ることで、第2歩目が第1歩目を追い越す加速が生まれ、この加速こそが「スウィング」と呼ぶ動作になるのです。
スローフォックストロットのベーシックにおいて、ライズ&フォールのあるほとんどのフィガー、特にSQQのタイミングで踊られるフィガーでは、2拍ある第1歩のウォークの終わりでライズ(ステップした第1歩に足が揃う瞬間にはライズが完了していること)、そこから第2、第3歩の「ライズを維持したままのアップの状態」で「フェザー」を踊り、3歩目の終わりでロアをします。同じスウィングダンスでも、ワルツのウォークからのターンで横に加速し足をクローズするのとでは、その仕方が随分と違うことがお分かりになろうかと思います。
要するにこのダンスの難しいところは、QQで踊る「フェザー」と呼ばれる部分なのです。ライズの状態で滞空時間を持ちつつ、パートナーのアウトサイドを加速して行くところ、と断言できます。このトウのライズを維持して加速するという推進力は、身体の中心への「引き」のエネルギーによって生み出されます。これを体感させるために、レッスン中「見えないロープを自分の方に手繰り寄せるような感じ」で踊りなさい、と昔よく言われたものです。
さらには、第3歩目へのアップのままの状態でCBMPにステップしつつ、パートナーにNFR(ノーフットライズ)で2歩目の右足TH(トウ~ヒール)、3歩目CBMPでTHのフットワークで後退できるようにするリードは、男性第2歩目の横少し前にステップしたその足の上を左ヒップ(左腰骨=スラックスの左ポケットあたり)が横切るように横へのヒップスウィングをしながら踊ることです。男女のそれぞれの腰のラインが向き合って踊るのではなく、「男性のヒップは横へ踊りつつ足がCBMPに前進、女性は足の上をヒップが素直に通過するCBMPでの後退」、このテクニックが非常に重要になってきます。これによってショルダーあたりに起こる男性の右スウェイを生み出し、女性後退の動作を誘導し、第3歩目の終わりでスムーズな着地(ロア)ができるようになるのです。
「引きのエネルギー」を持ちつつ、「トウからトウへ横へのヒップスウィングで踊る」。ズバリこれが、ゆったりとした4拍子で踊られるスローフォックストロットの攻略法なのです。
もちろんフェザーの前のウォークにも大いなる秘訣があるのですが、これは文字数の限界もありますので、年明けの号で解読を試みたいと思います。
ダンスがいかにスポーツ性を強調しようとも、生きた人間同士が向き合って踊る以上、筋力を使えば良いだけのものではありません。音楽の特徴を理解しつつ身体の合理性を理解し、個々の技量を上げ、カップルとなった時の相乗効果を期待することにダンスの上達があるのです。
ダンスが何を楽しむものなのかを再確認をしつつ、音楽を背景にしたテクニックの理解、個人のレベルアップのための練習を積み、カップリングの才能を大いに磨いて頂きたいと念じるところです。

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プロフィール

  • 田中 英和

    生年月日:8月9日
    出身:広島県広島市出身
    経歴:1997年2月にアデール・プレストン選手とカップルを組み、5月の全英選手権で日本選手初の第3位表彰台に輝く。「ヒデ&アデール」の愛称で国内外の大会で活躍し、翌98年の全英選手権5位入賞を最後に現役を引退。以降、審査員、コーチャーとして後進の育成にあたっている。また、本誌でも、7年にわたって連載レッスン「ナチュラル・ダンシング」シリーズを執筆し、大好評を博した。
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