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田中英和先生のワールドダンス

コラム&本誌企画

バルカーカップ統一全日本選手権

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各地で開催される競技会は年間相当数に上りますが、残念ながらトッププロであっても競技会の賞金だけで暮らしていける現状ではありません。もちろん、普段のティーチングやショー、パーティ開催での収益で生活しているのですが、賞金額ではやはり他のメジャーなプロ選手からすると、あまりに低いのが現状です。
嬉しくない話から始めてしまいましたが、まずは現実を見据えておく必要があリます。競技ダンスの世界で、いわゆるスター選手が生まれ難い理由の一つに、「カップルでの競技」と言う側面があります。野球やテニス、そしてサッカーやゴルフにしても、皆「個人プレーの素晴らしさ」にファンは熱狂しているのです。チームとしての成績も、個人プレーの延長にその成績がついてくるのであって、「スター」の存在はあくまで「個人プレーの素晴らしさ」ありきなのです。
フィギュアスケートを例に挙げると、個人総合優勝の評価とアイスダンスやペアの優勝の評価とでは、その知名度において大きな差があるように思います。ダンスも必ずカップルでの評価であり、その意味ではスターを生み出すことはそう簡単なことではないと言えます。
しかし、逆に言えば、カップルであるからこそ醸し出せる特別な瞬間に人が魅了されることも事実なのです。特別な空間やムーブメント、雰囲気を持ったカリスマ的なカップルがフロアに立つだけで、見る人は思わず身震いし、その時間に吸い込まれるのです。かつての偉大なるチャンピオンたちのバトルは、まさにその様相を呈していました。ピーター・エグルトン&ブレンダVSビル&ボビー・アービンのインターナショナル選手権での一騎打ちに、そしてマーカス&カレン・ヒルトンVSジョン&アン・ウッドのバトルに大声援を送ったものです。
男性ダンサーも女性ダンサーもダンスの奥義に向かって邁進し、カリスマダンサーと呼ばれるまでに自身を磨くべきなのです。「個人プレー」のレベルをさらに上げ、「個人プレーの素晴らしさ」がカップルとして融合すれば、どんなダンスが見られるでしょう。そのレベルでのリード&フォローが一体何を生み出し、醸し出すのでしょうか?想像するだけで興奮してしまうではありませんか。
今、そういう意味では絶好のチャンスなのです。男性も女性も個々に自分磨きに専念し、皆が憧れるダンサーとしてのボディを作り、魅力溢れる存在を目指すべきなのです。
さらに、ダンス界に目を移すと、ここにきてようやく、先を見据えた統一性を持った動きが見られるようになってきました。バルカーカップ統一全日本選手権をはじめ、統一ショーダンス、10ダンス選手権、プロ各団体のメジャーな競技会での選手や審査員の交流も始まっています。プロ選手強化を目指す「チームジャパン」もメンバーが揃い、いよいよ始動します。
そして、ボールルームダンスを日本における文化事業の一つと捉え、選手たちのレベルアップに貢献すべく、昨年からメインスポンサーとしてバルカーグループが高額な賞金を用意してくださり、「バルカーカップ」としてこの統一全日本選手権が開催されるに至ったのです。

両部門ともに大接戦を制し、橋本組・瀬古組が優勝!

今年で2回目となるバルカーカップは、優勝賞金がなんと500万円!準優勝にしても100万円!この高額賞金目指して日本のトップが参戦し、熱き戦いが繰り広げられました。会場はグランドプリンスホテル新高輪の「飛天」。この会場はボールルームダンスという社交場としても雰囲気、広さともに一流。生バンドでの音楽、美しいライティング、ディナーやダンスタイムを楽しみながら「日本最高の美の競演」を応援観戦するのですから、この日のこの時間を楽しみにされていたファンもさぞ多かったことでしょう。
ボールルームセクションでは大接戦を制し、橋本剛・恩田恵子組が庄司浩太・名美組を抑え連覇を達成。3位浅村慎太郎・遠山恵美組、4位新鞍貴浩・中田裕希子組と続き、最近の好調さを見せた森脇健司・的場未恭組と三浦大輔・美和子組が5・6位と続きました。
ラテンセクションでもこれまた大激戦が展開され、猛烈に追い上げた瀬古薫希・知愛組が前年チャンピオンの金光進陪・吉田奈津子組を退け、初の栄冠を手にしました。3位は増田大介・塚田真美組、4位正谷恒樹・齋藤愛組、5位には若手の第一人者、鈴木佑哉・原田彩華組が食い込み、ニューパートナーシップでチャレンジした芝西将史・中野愛子組がファイナル入りを果たしました。
セミファイナルも素晴らしいバトルを展開しましたが、その前の準々決勝もベスト12を目指した熱い戦いが繰り広げられ、まさに「統一」の名前そのままに日本のトップ争いは白熱しています。高額賞金の競技会、そして「統一」の戦いを通じ、次は世界へ目を向けた個々のレベルアップを試みてもらいたいものです。
ボールルームでは清水太地・早紀組、若代愼・辰巳友莉亜組、大西亘・池田ちかる組など、ラテンでは瀬内英幸・斎木智子組、森田銀河・小和田愛子組、竹内大夢・曽又奈々組などのポテンシャルの高いカップルも多く、今後さらに注目です。
高額賞金はプロのレベルを押し上げる大きな要因の一つです。これを勢いに、「統一」「チームジャパン」などの流れを大いにプラスと受け止め、世界に羽ばたくダンサーを目指して欲しいと願うものです。

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プロフィール

  • 田中 英和

    生年月日:8月9日
    出身:広島県広島市出身
    経歴:1997年2月にアデール・プレストン選手とカップルを組み、5月の全英選手権で日本選手初の第3位表彰台に輝く。「ヒデ&アデール」の愛称で国内外の大会で活躍し、翌98年の全英選手権5位入賞を最後に現役を引退。以降、審査員、コーチャーとして後進の育成にあたっている。また、本誌でも、7年にわたって連載レッスン「ナチュラル・ダンシング」シリーズを執筆し、大好評を博した。
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