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田中英和先生のワールドダンス

コラム&本誌企画

全英選手権・2週間前

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今年の上半期もゴールデンウィークが過ぎ、新緑の美しいシーズンを迎えていますが、ここロンドンでは5月の上旬でもまだ気温は低めの15度前後の日々です。緑の多いロンドンですが、まだまだ日本のような陽気には恵まれていません。

しかし、ひやっとした空気を吸い込んで街を歩き、練習に向かう選手には、このひんやり感が緊張感と相まって、身の引き締まる思いなのではないでしょうか。今月末から始まる「全英選手権」に向けて徐々に選手も英国に集まり、ロンドンやバーミンガムのレッスン場も活気を帯びてきています。

この時期に海外へ出てダンス漬けの毎日を過ごすことは、日本人トッププロにとってはかけがえのないこと。一年で最もインプルーブが期待できるシーズンなのです。レッスン場は、朝早くから練習するカップルでいっぱいです。フィガーのこなし方を練習する者、ポスチャーやポジションを確認する者、ベースアクションの確認に勤しむ者、エネルギーレベルを上げることに重きを置く者、踊り込みの中でお互いの呼吸を合わせることに専念する者…。それぞれにテーマを持って練習に励んでいます。

5月中旬は全英選手権の約2週間前です。このタイミングでは個人のレベルを上げる練習は当然として、カップルとしての総合力を上げることを主目的にすべき時期です。1月のUK戦が終わり、その反省を持って2月からの3カ月でどれほど基礎体力を上げるべく身体を鍛えて来たかが、ここにきて問われるのです。鍛えられたボディを持って最終調整に入れたカップルは、練習会やレッスンを繰り返すことで、他のカップルとは違う何かスペシャルな、キラッと光る瞬間を見せ始めます。一緒に練習するライバルにも、レッスンをするコーチャー陣にも、「おっ!」と思わせるようなダンスになるのです。

「今回、最もインプルーブしているのはこのカップルだな…」と、噂に上るのは一体どのカップルなのでしょう。存在感があり音楽性のある、他の海外の選手に引けを取らないボディを持ったカップルの出現を待ち続けて久しいのですが、さあ、今年の全英でそんな魅力的なカップルが現れるのでしょうか?

全英選手権に向け、前哨戦が続々と開催

かつては全英選手権前には多くの前哨戦とも言えるコンペが数多く開催されており、その前哨戦に毎年毎年チャレンジし続ける中で、こちらの審査員やコーチャー、海外からの審査員の噂に上ることで、その年のインプルーブ著しいカップルが誰なのかを割り出していたのです。

4月末の「ハーツボール」というローカルコンペがその始まりでした。この大会は非常にレベルが高く、モダン、ラテンとも世界のトップクラスが参戦する大いに盛り上がった競技会でした。日本からも多くの選手がエントリーをして果敢にチャレンジしていたものです。この大会に続いていたのが「イングリッシュオープン」。そして「NATD選手権」や「ダンス&リスンアウォード」などのローカルコンペを経て、最後が「インペリアル選手権」という流れでした。これらの競技会にチャレンジし続け、英国の、そして世界から集まって来ている審査員たちの前で踊り続けたのです。この緊張感を「最高の練習の場」と捉えていました。それは、ブラックプールでの成功を夢見た選手たちが皆、辿った道だったのです。

私もアデールとカップルを組んだ1997年。カップルデビューしたのがハーツボールでした。優勝はルカ&ロレイン・バリッキ、私たちは準優勝デビューをすることができ、第3位がアンドリュー・シンキンソン&シャルロッテ・ヨルゲンセンという結果だったのです。次は5月初旬のイングリッシュオープン。この大会ではアンドリュー組が優勝で、私たちは準優勝。ダンス&リスンで初優勝を遂げ、全英前最後のインペリアルでも優勝。そして最後の最後、全英選手権プロモダンでシンキンソン組を僅差で破り、ヒルトン組、バリッキ組に続く第3位の成績を収めることができたのです。

今年は5月13日の「Freedom to Dance Championships」が全英前の最初の競技会です。元世界グレートチャンピオンのリチャード・グリーブ氏が提唱した「踊る自由」の理念を形にしたこの大会で、現在はトニー&アマンダ・ドクマン、ジョナサン・クロスリー、ジョン・ウッドの4名がグリーブ氏の理念を引き継いで開催をしています。そして5月20日はギャラクシーインペリアル選手権。アンソニー・ハーレー氏が長年開催していたインペリアル選手権を、今ではマイケル・ステリアーノス&ローナ・リー夫妻が引き継ぎ開催しています。

これらの大会を経ていよいよ全英選手権、ブラックプール・ダンスフェスティバルがやって来ます。今年から「プロアマ競技会」もセクションに加わり、開催期間も大幅に長くなっていますから、出場する選手には自身の出場するカテゴリーに集中できるよう、クレバーに旅行日程を組んで大会当日に備えて頂きたいものです。

鍛え抜かれた隙のないボディとカップルバランスで、最高のパフォーマンスで真剣勝負に挑んでください!

Dance Well & The Best Luck !!!

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プロフィール

  • 田中 英和

    生年月日:8月9日
    出身:広島県広島市出身
    経歴:1997年2月にアデール・プレストン選手とカップルを組み、5月の全英選手権で日本選手初の第3位表彰台に輝く。「ヒデ&アデール」の愛称で国内外の大会で活躍し、翌98年の全英選手権5位入賞を最後に現役を引退。以降、審査員、コーチャーとして後進の育成にあたっている。また、本誌でも、7年にわたって連載レッスン「ナチュラル・ダンシング」シリーズを執筆し、大好評を博した。
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