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田中英和先生のワールドダンス

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上達の秘訣 4

良いダンスを見ることから上達という階段を登り始めるのですが、見える通りに真似をする、いわゆる「見習い」がその第1歩で、理論を学び、実際にやってみては失敗をし、修正を繰り返す中で理解が深まりダンスのレベルも上がっていくのです。

しかし、良いダンスというものは、それが強く見えたり、大きく見えたり、速く見えたりするものです。要するに良いダンスは「錯覚」のかたまりとも言えるのです。だからこそ「思い込み」に走りやすいのですが、その「強く見える」ということを節々を固めるが如く、腕力や脚力などの筋力を使ってしまったり、「大きく見える」ということを息を吸い込みながら肘を横に突っ張ってしまったり、身体の表面にある「随意筋(自分の意思でコントロールできる筋肉)」を引き伸ばすことで踊れる身体ができたとするのは、これはあまりにも安直なやり方と言えます。

例えば、良いダンスをするダンサーは大きく見えます。私は178cmですが、チャンピオンで全盛の頃、身長が185~6cmくらいあるダンサーに思われたことがあります。これをウォークの理論で説明すると、立っている方の脚でもう一方の脚を振り始めるとき、立っている脚の膝がつま先より前に緩んでいく過程で、その膝の上に骨盤が、そしてその上に肋骨、肩、頭が垂直な関係になる瞬間が生まれます。その瞬間、肩から膝までが長い胴体であるかのように見えるのです。そして、その後に脚振りと送り足のタイミングが合うとき、送り足が脇の下からつま先までが長い脚であるかのように見えるのです。この一連の動作によって、長い胴体と長い脚を持つダンサーとなり、実寸よりも高い身長に見えるという錯覚を生み出すのです。

速く見えるというのは、実際のスピードもありますが、アラインメントの変化やカップルの入れ替わりもポイントになります。アラインメントとは部屋におけるステップする足の方向を言います。ワルツのナチュラルターンの前半で説明すると、男性は第1歩「壁斜めに面して」で第2歩は「中央斜めに背面して」とあり、第3歩で「LODに背面」となっています。第1歩から第2歩の回転量は1/4(90度)です。右足が壁斜めに面した状態で前方にステップ、ヒールでフロアタッチしている状態を作ってみてください。これをタイミング1とします。そこから自分の背中が中央斜めに背面するように90度の回転量を目処に、ほとんどその場所で左足を横にボールのインサイドエッジでステップします。タイミング2です。この時のアラインメントの変化が身体のスピードになり、進行方向に対して女性の手前にいた男性が女性を追い越し、女性の向こう側に位置するようになっているはずです。

 

強く、大きく、速く見えるためのインナーとアウターの筋肉バランス

加えて、ダンスでの入れ替わりに意外にも大事なのが「視野」の利用。第1歩でパートナーの右横を抜けていくようなCBMの動作やCBMPの足の位置などで男性の左サイドが進行方向に上がっていくような、伸びていくような大胆なシェイプになりますから、後退担当の女性からすると自分の視野から男性が消えていくような瞬間に近づきます。そのまさに「今でしょ!」というタイミングでアラインメントが変わるのですから、入れ替わりの瞬間がボディスピードをより素早いものに見せる「錯覚」を生み出すのです。

ただし、ステップした足に全体重を乗せていく、そしてその足の上でボディを加速させながら通過させる努力は、パートナーとの入れ替わりを遅くし、逆に体当たりでもするかのような非常に危険な動作になってしまうこともあります。「ボディで踊る」という言葉を「ボディで体当たりをする」「ボディで相手を運ぶ」とならないように気をつけて頂きたいものです。

それともう一点。「インナーマッスルの仕事量を増やす」ことです。例えば赤ちゃんは、生まれて11カ月もすると立ち上がってよちよちと歩き始めます。これは赤ちゃん自身の骨格を支える最低限のインナーマッスルが発達した証です。私たちが普通に立っているときにどの筋肉を使っているのか明確に言えないのも、骨格を支えるだけのインナーマッスルが十分に仕事をしてくれているからなのです。美しい骨格を維持する能力も強く見えるスタイルもインナーマッスルの合理的な働きがあってのことで、片足に立って美しく姿勢を保つことも、その脚を使ってもう一方の脚を振るのも、背骨をしならせるのも、はたまたホールドを力みもなく広く美しく維持するのも、私自分の感覚ではインナーマッスル60%、表面の随意筋40%くらいの比率の時がもっとも効率が良いように感じます。

スタイルが美しく強く見えるのは、骨格的な合理性と身体のインナーとアウターの筋肉バランスの良さなのです。アウターの筋肉は固まってなく、伸びきってもいないのですから柔軟性があり、程よく温かみもあれば、瞬発性や持久力も大いに期待できます。しかしこれらが、インナーマッスルという見えない筋肉の仕事だと考えると、ある意味これも見る側に与える「錯覚」なのかもしれません。

ダンスは音楽的な流れの中における、スタイリッシュでエレガントなエスコートです。握力や腕力、脚力に頼るのではなく、男性は女性のバランスとシェイプに責任を持ちつつ、強靭なインナーマッスルが大きな仕事をしたとき、女性は喜んで美しく舞ってくれることでしょう。そして男性も女性も格段の上達を遂げるのです。

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プロフィール

  • 田中 英和

    生年月日:8月9日
    出身:広島県広島市出身
    経歴:1997年2月にアデール・プレストン選手とカップルを組み、5月の全英選手権で日本選手初の第3位表彰台に輝く。「ヒデ&アデール」の愛称で国内外の大会で活躍し、翌98年の全英選手権5位入賞を最後に現役を引退。以降、審査員、コーチャーとして後進の育成にあたっている。また、本誌でも、7年にわたって連載レッスン「ナチュラル・ダンシング」シリーズを執筆し、大好評を博した。
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