まもなく発売となるダンスビュウ2023年5月号（3月27日発売）で、特別付録DVDに収録のレッスンを務める講師は、元統一全日本ラテンチャンピオンの金光進陪先生です。「アクション」と「ムーブメント」の違いをテーマに、ボールルームダンスの本質を洞察し、ラテンダンスを魅力的に踊るための秘訣を明かします。

今月のDVDは、金光進陪先生の「マニアックラテンメカニズム講座」をお届けします。「アクションとムーブメントの違い」がテーマです。前半はラテンダンスのルーツから考えるダンスの本質と、クカラチャとルンバウォークを例にしたヒップのペンデュラムアクションとローテーションの解説。後半は男女別にスライディングドアーズを実演し、身体の動きのメカニズムを解説しています。

このレッスンの中で、最も多くの時間が割かれているのは、ムーブメントのメカニズムでしょう。ムーブメントとは、一体どんな運動なのか、身体のどの部位を使い、それらをどのように連携させるのか、そしてアクションと組み合わせるとどんな効果があるのか、ということを、とことん詳しく追及しています。情報量の多さと密度の濃さ、話の展開の面白さ、個々の動きにフォーカスする解像度の高さは、まさにマニアックラテンメカニズム。喋り倒されるが如きの圧倒的な情報と話術で、約40分の独演会が展開します。

最初に「アクション」と「ムーブメント」の違いをご存じでしたか？という問いかけがあります。“動く”という意味で、なんとなく一緒にされやすいが、この二つの違いを理解していないと、美しくかっいいラテンは絶対に踊れない、という前提からレッスンがスタート。特に興味深いのは、ラテンダンスのルーツを振り返ってダンスの本質を考察する解説です。ラテンは、もともとスタンダードから派生して生まれたダンスである。つまりラテンは激しくワイルドに見えるが、元々は宮廷舞踊で、舞踏室で踊られていたボールルームダンスがベースなっている踊りである、それゆえ、美しさやエレガントさが最初に備わっていなければならない、という信条です。一方、「アクション」と「ムーブメント」の違いについては、ムーブメントは足から足へ、背骨の移動を伴う動きであること、一方アクションとは背骨の移動がない状態で身体の中が動くことである、と定義されています。ラテンダンスというとアクションに意識がいき、移動がないままクネクネ動いてしまうが、スタンダードダンスがベースになっている以上、背骨がムーブしていくことに本質がある、という主旨の講義が展開されます。

我々が踊っているラテンダンスというものは、一体どこから来たのだろう、どんな動きの遺伝子を受け継ぎ、それはどのステップに現れ、何を表現しようとしているのだろう…。解説の合間には、海外の選手の動きと日本人のダンスを比較したエピソードや、競技会の審査の視点等のトピックも加わり、どのようなラテンダンスが魅力的に見えるのか、というダンス観が開陳されます。

筆者が個人的にハッとしたのは「年齢が行くにつれて、身体は動かなくなります。～中略～年をとってラテンがかっこよくなくなってしまう人にとって、このDVD（を見て）、超ラッキーです」と語る場面。確かに加齢は必然で抗うことはできないが、劣化した身体を使ってどうやって踊るのか、ということが、ある年齢を過ぎると切実な問題になってきます。若いころ、筋力と柔軟性があった時期は、それなりに動けた、やがて年をとって、コチコチのラテン(スタンダード)になってしまった、という現象は、多くの方に訪れる問題です。その一方、かなり年齢が行っても、それなりにかっこよく踊る人は、確かに見かけます。動きに味があり、見ていて“あぁ、いいなぁ”と思うダンスを踊るダンサーは、何を身につけているのだろう、動き方のシステムが他の人と違うのではないか…。そんな疑問をずっと抱いていましたが、今回のレッスンは、その疑問に解を与えてくれるものでした。

金光先生の語る「超ラッキー」とは何でしょう。二十歳で見るか、四十歳で出会うか、還暦で知るか、出合う時機は人それぞれでしょうが、超ラッキーは受け手が学びをつづけ、あるレベルに達して自らの歩みを振り返った時に、「あの人に出合って、この贈り物を受け取って、超ラッキーだったな」と自覚するもの。そんなラッキーが去来するダンス人生を歩みたいものです。

■2023年5月号特別付録DVＤ内容のご紹介

（文・ダンスビュウDVD制作担当）