活気あふれる新たな環境を目指せ!
今年も桜の季節がやってまいりました。この時期、日本では卒業式や入学、入社など、別れと新しい出会いがあり、どこか寂しい感情がありつつも新たな希望に満ちています。何か新しいことを始める素晴らしい季節と言えるでしょう。分厚いコートを脱いで、軽やかな足取りで、新しい春を謳歌したいものです。
この時期はダンス界もJDCアジアオープン、JBDFスーパージャパンカップ、JCFユニバーサルグランプリ、そしてNDCJ統一全日本10ダンス&ジャパントロフィーと、春のビッグコンペが開催され、どの競技会もレベルの高い熱戦が繰り広げられました。この春シーズンの競技会を終え、選手たちもほっと一息ついているところではないでしょうか。
そして4月に入ると、徐々に気持ちは海外での活動プランに移っていきます。5月開催の今年100周年を迎えるブラックプールダンスフェスティバルを頂点に、6月にはJBDF日本インター、JCF全日本戦など、今年上半期のピークを迎えます。これらビッグイベントに向けて、国内での活動、そして海外での強化プランを確定する重要な時期に当たります。
それに合わせるように海外ではダンスキャンプが盛んに開催されます。世界のトップクラスがこぞって参加し、さらなるパワーアップを図ります。実際に日本から、イタリアで開催されるダンスキャンプに参加する選手が増えてきており、今やイタリアの著名なコーチャーたちに師事する傾向が強くなってきています。コーチャーたちのレベルの高さと熱心な勧誘がその要因ですが、背景には、イタリアでのレッスン代や滞在費が英国と比べて安価なことも事実のようです。
ところが今、世の中は大変な事態を迎えています。終わりの見えない物価高と円安が海外にチャレンジをする気持ちに水を差し、加えて、戦争による先の読めない不安が追い討ちをかけており、おいそれと海外に勉強に行く気分になれないことも事実です。逆に外国人コーチャーが日本に来て、レッスン会を開くことが多くなっていますが、レッスン代は過去にないほど高額です。海外に行くことを考えれば、それでも安上がりではありますが、2レッスン、3レッスンと気安く受けられるような感じでもありません。自身のレベルアップには、レッスンというものは欠かせないのですから、海外に行こうと国内でレッスンを受けようと、たとえそれが少ないレッスン数であっても、有効に、効率の良いレッスンの受け方を工夫する必要があるでしょう。
ならば、日本のトップコーチャーたちも、その底力を見せるべきでしょう。日本人として世界レベルで活躍してきたダンサーは多数存在するのですが、現状は、個人個人がそれぞれのレベルで指導しているに過ぎません。今こそ、その叡智を結集し、日本で日本人コーチャーが日本人ダンサーたちのレベルアップを強力に押し上げる努力をするべきではないでしょうか。
ダンス人口の減少は否めません。組織の統合や再編もなかなか進みません。そして選手も指導者も活動は個々の努力に頼ったものであり、全体としての勢いもなかなか生まれません。まずは小さな単位であっても叡智を結集し、それを盛り上げていく方向に考えるべきです。
中国のアカデミーや舞踏学院のような教育機関では、一貫したトレーニングでレベルアップを図っており、イタリアやポーランドなどではトップダンサーの元に若手選手たちが集まり、そのグループから素晴らしいダンサーが輩出されている事実もあります。そこには「何が良いのか」という答えと、「そこに向かう一貫したノウハウ」が存在するのです。
私たちはすでに、最終的に何が良いものなのか、何を理想とすべきなのかを知っています。ですから今、何が良いのかを模索したり、試行錯誤する必要は全くないのです。そしてそれを教えてもらう必要もないのです。ただその答えに向かって行く「一貫したノウハウ」を身に付ければいいのです。
日本の各団体には、傘下に選手会があり、技術団体もあります。素晴らしいスタジオも数多く存在しています。才能のあるジュニアを多く輩出している指導者もいらっしゃいます。あとは、皆が集まって、ダンサーたちが目を輝かせてダンスに専念できる環境を作り、新たな取り組みを始める時期に来ているのだと私は思います。
ミラノ・コルティナ冬季オリンピック/パラリンピックでは、日本選手の活躍が過去最高のものとして大きく報じられましたが、アスリートたちの目はキラキラと輝いていました。ダンス界も、そんな輝いている選手でフロアがいっぱいになるように、舵を切っていかなければ
なりません!
(月刊ダンスビュウ2026年5月号掲載)



