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田中英和先生のワールドダンス

コラム&本誌企画

理想のホールドとは

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 誰もが良しとするホールドをいかに作り上げていくか。これはボールルームダンスの向上を目指す者であるなら、永遠の課題と言えるものです。ビル・アービン先生も「ホールドに始まりホールドに終わる」と、名言を遺しておられます。

 ホールドとは、踊るときに必要な、社交ダンス独特の「あの形」を意味するもので、特に男性は、肘が落ちないように、最初は肘の位置を維持する訓練から始めなければなりません。もちろん肩も上がりやすいので、肩を下ろす努力も必要です。フィガーを覚えながら、ホールドの形を維持する練習をしなければならず、そういう意味では、初めから女性と自由に無理なく踊るのはなかなか難しいことだと思います。

 ところがです。姿勢が良くなるにつれて、ホールドとのバランスも良くなってきます。次第に力むことなく、美しいシルエットでホールドを維持するコツがわかってくるようになります。それを3カ月や半年くらいで会得する者もいれば、3年、4年かかってもなかなか会得できない人もいるかもしれませんが、まずは良い姿勢とホールドのバランスを掴まなければなりません。コツがわかってくると上体の無理が無くなっていきますから、力まずに足を使うことができ、踊りやすくなるでしょう。

 このバランスを会得し始めたら、ひとりで踊る「平面的な形」から、カップルで踊るための、そしてパートナーのバランスをサポートできる「立体的なホールド」にバージョンアップしなければなりません。それは体幹を支えるインナーマッスルの仕事量が増えることを意味します。パートナーに安心と安全を感じてもらえるサポート力のある美しいスタイル、それこそが皆が追い求める仕事のできる美しい「ホールド」なのです。

 そこに前回お話した内容が出てきます。そう、両肘を横に張り出して威嚇するようにパートナーと「対峙」するのではなく、「男性の右サイドにパートナーの左サイドが寄り添える」場所に二人が立つことから始まるのです。PPに開いているような位置関係で寄り添い、触れ合いを持って自然に馴染むような感覚を持っていただきたいのです。それは海外のホテルなどで踊られているティーダンスのような、スマートなイメージです。

 そのスタイルを、競技会などで求められる、より強く大きなホールドに展開するには、単に肩を下ろして首を伸ばし、お腹を引っ込め、肘を張るだけのホールドでは困るのです。パートナーとの共同作業としてのホールドの構築を試みて欲しいのです。それは次のようなものです。

 男性の右足のボールの圧を少しづつ加えながら、女性のいる右方向へ向けていく。それにつれて身体のトーンが増え、姿勢がさらに良くなり、強くなっていくでしょう。同時に男性の両アームも右回転のエネルギーを持って広がり、両肘も理想の位置、高さまで上がっていくのです。

 女性も男性ホールドの展開に沿って、脚からウエストあたりまでは右のスパイラルのエネルギーでボディが伸展し、ウエストから上の上半身はやや男性の右アームに向かって踊れるようやや左回転の動作が加わり、女性のあの独特にカーブした、くびれの綺麗なラインを持ったスタイルが出来上がります。こうして「時間と空間、そしてエネルギーを共有する」カップルとして最も美しいホールドに近づいていけるのです。

 ホールドとは単に形だけを言うのではなく、「二人の共有するものによって合理的に作り上げられた関係性を、上手に保持している状態」のことであり、男性の腕や手は女性のバランスを優しくも安全に保ち、明確に次へ動く方向性を示すものと解釈すべきなのです。

 強く大きく踊る競技会であっても、ホールドの仕事内容は女性のバランスとシェイプに責任を持つことであり、女性も男性の右アームにフォローできる感覚を養って行かなければなりません。男女ともにホールドはとても重要な役割を担うもの。合理的で美しいスタイルのまま、音楽的にも伸びやかにどんどん踊っていけることを大いに楽しんでほしいものです。

(月刊ダンスビュウ2026年10月号掲載)

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プロフィール

  • 田中 英和

    生年月日:8月9日
    出身:広島県広島市出身
    経歴:1997年2月にアデール・プレストン選手とカップルを組み、5月の全英選手権で日本選手初の第3位表彰台に輝く。「ヒデ&アデール」の愛称で国内外の大会で活躍し、翌98年の全英選手権5位入賞を最後に現役を引退。以降、審査員、コーチャーとして後進の育成にあたっている。また、本誌でも、7年にわたって連載レッスン「ナチュラル・ダンシング」シリーズを執筆し、大好評を博した。
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