海外での競技会に参加して
この8月、私は中国深圳と台湾台中で開催された競技大会に参加しました。深圳での競技会は「ユニバーサルオープンワールドカップ」という毎年8月に開催されている大会で、経済特区の深圳のヒルトンホテルを会場に、3日間に渡って様々なセクションで熱戦が繰り広げられました。そしてその翌週には台湾中部の都市、台中で「台湾グランプリ」と称したビッグイベントが開催されました。
この2つの競技会のメインイベントは「WDO世界選手権」で、深圳の大会ではプロラテン、台中ではアマボールルームの世界選手権がメインイベントで、それ以外にも世界オープンのプロ、アマ、ジュニアなど数多くのセクションで競技が繰り広げられ、私も早朝から始まった子どもたちのソロダンス競技からプロオープンまで、幅広くジャッジを担当させていただきました。
中でも子どもたちのシングルで踊るシャドーコンペは、今回の深圳と台中の競技会だけでなく、香港やシンガポール、マレーシア、台北などのアジア諸国で開催される競技会では最も出場選手が多いセクション。ボールルームもラテンもフロア狭しと踊る姿は、その国の勢いを見る思いです。
シングルで踊る競技が盛んなのは、もちろん男女比が圧倒的に女子が多く、カップルを組める機会が少ない背景があるのはどの国も同じ。練習としてシャドーをすることは上達のための基本なのですから、そのシャドーでのダンスで競技会をすれば全員出場できると考えるのは自然なことです。
自分でフロアの上に立って、音楽を聞いて、自分でスタイルを維持し、自分で加速をして自分でポーズを決める。身体を自在に操る能力を高めることはダンサーとして必須条件なのですから、特に若年層でのこの競技は意味のあることだと思います。
実際に「毎年同一の競技会に参加しています」と、1年前に見たことのある子どもたちがさらにパワフルに、かつ魅力的に踊っており、確かな成長ぶりを見ることがよくあります。例えば台湾では台北、台中、高雄の主要な都市のどこかで毎週のように競技会が開催されており、競技会で踊れる機会はとても多く、しかも1日の中で出場できるセクションも多いので、ほとんど丸1日フロア上で踊っているような競技会もあるようです。
加えて、審査をする面々も世界のトップジャッジが招かれていることが多く、鋭い目でジャッジをされるのですから環境的にも恵まれていると言えるでしょう。そんな中で経験を積めば、上手くも強くもなります。
カップルが組めない状況は確かに残念なことではありますが、自分自身のレベルを上げる絶好の機会でもあります。踊るために必要な何でもできる身体作りは、まずシャドーを繰り返すこと。そしてそのシャドーの成果を発表できるシングルのソロ競技に繰り返しチャレンジすること。これが上手くなり、強くなるためのベースになります。
シングル競技の良い側面は、ラテンで言えば、例えばルンバウォークの美しさに加えてアームワークや表情の変化、スピンの素早さなど様々な表現が加味されますし、ボールルームでは、自分で美しいホールドを維持し、素晴らしいスウィング、足の美しいクローズやヒールターンを正確に行なうなど、自身の能力を高める絶好のきっかけになるのです。
海外での競技会で審査を担当すると、競技にチャレンジする子どもたちの熱気に圧倒されます。特にラテンでは、それこそ大人顔負けの圧巻のダンスです。
そんな子どもたちが成人を迎える頃になると、それまで鍛えられた踊れる身体を持った者同士がカップルを組むのですから、それはすぐに脚光を浴びるような素晴らしいダンスになるのは想像に難くありません。
日本でも、例えば友達同士でシンクロのように踊ることの楽しさを発表する場があったり、競技の場が増えたりすると、衣装を着たり、メイクをすることなどでも楽しさが広がり、ダンスにハマる子どもたちがどんどん増えるのではないでしょうか。
近い将来、日本各地で子どもたちが生き生きと踊る姿がたくさん見られるよう、私たち大人がもっと良い環境を作っていかねばなりません。
(月刊ダンスビュウ2026年11月号掲載)



