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田中英和先生のワールドダンス

コラム&本誌企画

皆さんのプラス思考に期待

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新型コロナウイルスの影響により、ダンス界でも人が集まるイベントはほぼ全て中止や延期に追い込まれています。基本的には、しばらくは政府からの自粛要請を受けて、ウイルスの感染拡大を封じ込めるべく様子見が続くことになるのでしょう。

また、「濃厚接触」という、妙に嫌な響きの言葉に連想されるものの一つに「社交ダンス」があるのは確かで、不特定多数と踊る可能性のある大人数の団体レッスンなどは、自らの判断でその開催自体を取り止めているところが多いと聞きます。日本という国は、「自粛要請」を受けて自らの判断でそれを実行に移せる素晴らしい国です。国によって私権がコントロールされる事態にならないためにも、私たちは過剰なデマやニュースに踊らされず、自身の健康管理と手洗い、うがいを徹底しようではありませんか。
ダンスを愛する私たちは日頃から足腰を使い、背中を伸ばし、音楽に乗って身体を動かしていますから、体力も免疫力も相当にあるでしょう。そして身体年齢、精神年齢も相当に若く、家にじっと籠っていることはありません。日本人は冷静になって出来るだけ普通の生活をしていけば大丈夫! と思いたいですね。
テレビでは連日、新型コロナウイルス関連のニュースばかりで気分も相当落ち込んでしまいますが、ここは敢えて、普段は競技会に追われてなかなか落ち着いてできなかったことに専念する良いチャンス、と考えるのも一考です。

自分のダンスを見詰め直し、「勘違い」や「思い込み」からの脱却を!

ダンスは実際に外に見えるものです。姿勢が良く、身体に張りがあり、ホールドもビシッと決まり、膝を柔らかく使った美しいフットワークなど、全て目に見える事柄ばかりです。カップルの広がりも、入れ替わりの美しさも、大きさもそうです。ですから競技会では、身体をフルに使っていかに大きく美しく動くかを競うことがメインテーマになるのです。
が、しかし、敢えてここで私が提案したいのは、自身のダンスをちょっと再考してみること。すなわち「ダンスは見えないものをフルに使った結果」だ、と言うことです。
外から見えないもの。それを端的に言えば「知識」と「理解」です。私たちがなかなか上手にならないとするなら、それは「勘違い」や「思い込み」によるところが多いように思います。中でも最も勘違いをしているのではないかと思うことは、「通過の理解」です。例えば前進動作で言えば「ステップされた足に体重が移動し、その足の裏を重心がヒールからトウに移動する動作」で、「足裏に感じる重心移動」と理解している人がほとんどではないでしょうか。初心者の方々にはとっても大事な動作ですが、それは一緒に踊るパートナーへのマナーのようなものだからです。
しかし、実際には「通過」とはステップからステップへの移動の際に生じる現象なのです。要するに「ステップとは足の位置を言うもの」で、中間バランスに立ったりや体重移動といった動作を含めてはいけないのです。「右足前進」であれば「右足が前方にステップされた足の位置のこと」を言うもので、そのステップされた足の上に体重を送って乗せていく動作ではないのです。
ワルツのウィスクで言えば、男性壁斜めに面して第1歩の左足が前方に進めた足の位置にあり、そこから2歩目の右足を横少し前にステップする際に1歩目の上をヒール〜ボールでライズが始まり、2歩目の位置へステップします。このときはライズの継続ですからフロアには右足のボールでタッチし、3歩目の左足を同じ高さで2歩目の足の後ろに交差する位置にステップしますが、その際に2歩目の右足のボールに立ち、3歩目が交差する位置にステップされます。その3歩目もボールでフロアにタッチするので、体重はあまりかかっていません。3歩目の終わりでロアのときには、次のシャッセfrom PPなどの第1歩がPPでステップされているはずです。

それぞれのステップには足裏のボールで床を感じるくらいの圧がかかっていますが、一歩一歩踏み締めて踊ることはしないのです。すなわち「体重のないステップから次の体重のないステップへの移動のこと」を「通過」と解釈することで、立っている方の脚の使う時間が長くなり、降り出す足のノウハウがインナーマッスルの利用へと展開するチャンスが生まれます。もちろんこれらがスウィングダンスでも、スウィングのないタンゴでも、はたまたサンバやチャチャチャ、ジャイブに至るまで、社交ダンスの上達の全くのベースになっていると言い切っても過言ではありません。
競技会に追われない時間があるのなら、今一度、走り回っていた自身のダンスを振り返って、合理性のある知識と理解で洗い直してみてはいかがでしょう。もし勘違いがあったと感じられたなら、強靭なまでのインナーマッスルを使ったパワフルな「通過」の動作が生まれるかもしれません。それを手に入れることができれば、次にやって来るコンペが待ち遠しくて仕方ないものになるはずです!
私も、この嫌な時期が早く収束すること、そしてこのタイミングを皆さんがプラス思考で乗り切られることを願っています。

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プロフィール

  • 田中 英和

    生年月日:8月9日
    出身:広島県広島市出身
    経歴:1997年2月にアデール・プレストン選手とカップルを組み、5月の全英選手権で日本選手初の第3位表彰台に輝く。「ヒデ&アデール」の愛称で国内外の大会で活躍し、翌98年の全英選手権5位入賞を最後に現役を引退。以降、審査員、コーチャーとして後進の育成にあたっている。また、本誌でも、7年にわたって連載レッスン「ナチュラル・ダンシング」シリーズを執筆し、大好評を博した。
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