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コラム&本誌企画

The Open Worlds 2025がブラックプールで開催!

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 2022年に始まった「The Open Worlds」も今年で4回目の開催となりました。第1回大会では2日間だったのが、今年は5月8日から13日までの6日間と期間が伸び、連日早朝から夜遅くまで多くのセクションで熱戦が繰り広げられました。

 メインイベントのプロボールルームではスタニスラフ・ゼリアニン&イリーナ組が安定したそつのないダンスで優勝を飾り、スタス・ポルタネンコ&ナタリア組が軽やかなクイックステップなど、若手の勢いに負けない実力を発揮して準優勝。第3位にはグレン・ボイス&キャロリー組が素晴らしいダンスを披露し、チャンピオンの座を虎視眈々と狙ってきています。4位にはウクライナのイゴール・レズニック&リカ組が入賞。クリーンでパワフルで伸びのあるムーブメントは私の好きなスタイルです。5位にはマディス・アベル&リイス組が続きましたが、最近少々迷っているのかやや精彩を欠いた印象でした。6位は中国のフィリップ・ペン&ジョアン。明るく爽やかで生き生きと踊るスタイルは好印象です。7組ファイナルとなった最後はアイスランドのアレックス・グンナーソン&エカテリーナ組。長身を生かした美しいムーブメントを得意としています。

 プロラテンでは人気No.1のニノ・ランジェラ&アンドラ組がここでも隙のないハイレベルなパフォーマンスで優勝を遂げ、マッシモ・アルコリン&ラウラ組が準優勝。3位にはパワフルでショーマンシップに溢れるキリル・ベルルコフ&バレリア組、同じくパワフルで存在感のあるパシャ・ズヴィチャイイ&ポリーナ組が4位。このところ評価が上昇中のピーター・ダスカロフ&ジア組が5位にランクインし、ジュゼッペ・ノニス&ダーシャ組が6位と続きました。

 日本勢ではボールルームは福田裕一・エリザベス組が14位にランクされ、セミファイナルまでもう一息! ライジングスターで金野哲也・井之口香織組が4位入賞したのも嬉しいニュースです。野村直人・山﨑かりん組も健闘しセミファイナルには届かなかったものの第14位。また、アマボールルームは五月女光政・叡佳組が16位にランクされました。さらには、シニアの65歳以上ボールルームで松村健樹・栄子組が優勝の栄冠を手中に収め、50 歳以上の部でも第5 位入賞。石山誠・直子組は65歳以上で5位に入賞しました。

 さて、この大会は元プロラテンファイナリストのポール・キリック氏主催のプライベートコンペで、WDOが主催する競技会ではありません。が、第1回大会の最
終日にWDO世界プロボールルーム選手権が、第2回大会ではWDO世界プロラテン選手権が併催されたことで、この大会自体がWDOの競技会という認識になったのだと思いますが、昨年、そして今年もWDOのイベントは併催されず、世界や英国内のダンス組織とは関係のない競技会として開催されています。

 しかし、表向きはそうでも、実際には昨今の「Blackpool Dance Festival」の流れに反対するレジェンドたちや世界の現役選手たちが参加しており、その多くがWDOの中心的人物です。そしてプログラムに掲載されている広告の全てがWDO関連の競技会やイベントであるのを見ても、これがWDOの競技会ではないと断言
できる理由はありません。

 The Open Worldsは5月13日に終わったばかりですが、同じタワー・ボールルームで14日から16日までの3日間、今度はWDCのLegend Dance Campが開催さ
れ、その流れのまま17日にはウインターガーデンでBlackpool Dance Festivalが開幕。大会期間中にはWDCの総会やWDC President Awards&Dinnerというイベントもあり、ブラックプールはWDOの色から一転、WDC一色に。Festivalの開催自体、WDCの影響の下で運営されているのは明らかでしょう。

 この「2つのブラックプール」は、表向きWDOでもなくWDCでもないと言いつつ、双方が理想を目指す上で衝突した結果であり、このような「分裂」状況になっているのは否定し難いことです。

 この4 月にはSNS を通じて、来年「Blackpool Dance Festival (全英選手権)」が記念すべき100回大会を迎えるにあたり、全ての方々に、再び一堂に集まり共に100周年を祝おう、と異例の呼びかけがなされました。一度は離れたレジェンドたちや選手たちもこの呼びかけに賛同し、ウインターガーデンのフロアに集まろうとする動きもありますが、パンデミックで価値観が変わったこともあって、「2つのブラックプール」からの脱却は、そう簡単には進まないのかもしれません。かつてのように全ての選手が目指した、そして全てのダンス人が熱狂したあの世界が戻ってくることは夢のまた夢になってしまったのでしょうか…。

(月刊ダンスビュウ2025年7月号掲載)

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プロフィール

  • 田中 英和

    生年月日:8月9日
    出身:広島県広島市出身
    経歴:1997年2月にアデール・プレストン選手とカップルを組み、5月の全英選手権で日本選手初の第3位表彰台に輝く。「ヒデ&アデール」の愛称で国内外の大会で活躍し、翌98年の全英選手権5位入賞を最後に現役を引退。以降、審査員、コーチャーとして後進の育成にあたっている。また、本誌でも、7年にわたって連載レッスン「ナチュラル・ダンシング」シリーズを執筆し、大好評を博した。
    田中英和ダンスワールド

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