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田中英和先生のワールドダンス

コラム&本誌企画

バルカーカップに思う!

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本当に1年はあっという間に過ぎ去っていくものです。2022年を振り返ってみれば、各団体による競技会が各地で活発に、しかも有観客で開催されるようになり、出場するダンサーにとっては何よりの喜びだったことでしょう。パーティなども盛んに開催されるようになり、演技発表出演の方々も踊れる幸せを満喫されたのではないでしょうか。

プロアマの競技会もかなりの規模で開催されるようになりました。特に6月の日本武道館で開催されたJBDF主催「日本インターナショナル選手権」では現役のプロだけでなく引退したOBやOGの先生たちも生徒さんとのカップルで熱戦を繰り広げていました。私も審査員の一人として参加させていただきましたが、2023年にはこの大会はさらに規模を大きくして開催されることは間違いないと確信した次第です。

そんな中、ちょっと物議を醸すイベントが行なわれました。11月20日に「飛天」で開催されたJDC主催の「バルカーカップ」は、センセーショナルな結末を迎えた大会になったようです。出場資格をプロ、アマ問わず中学生以上の国内の選手とし、高額賞金(アマチュアの場合は同額の報奨金)をかけて競われたのです。これまでにないコンセプトを持って開催され、結果は両セクションともにアマチュア選手が優勝を飾り、そのニュースはSNS上でも飛び交っていました。

結果は結果です。その結果に対して異を挟むわけではないのですが、私にはどうしても納得のいかないものが残っています。同じワルツやタンゴ、サンバやルンバの音楽を用いカップルで踊るダンスではあるのですが、私は「競技ダンス」と「ダンススポーツ」は異種なものであるという見解を持っています。

それぞれの競技会での審査員の採点基準が、「相対評価」であるか「絶対評価」であるかの違いが挙げられます。簡単に言えば、相対評価は同じフロア上で複数のカップルを比較対象で採点する方法で、絶対評価はその1組の技に対する評価方法です。何を良しとするかの基準が違えば、上達への道のりが全く違ったものになります。異種なものと感じさせる理由は、勝つためにすべきことの優先順位が違っているからです。エネルギーレベルを外に見せるダンスへのアプローチと、エネルギーレベルによって外に醸し出されるものを重視するダンスのスタイルでは、表に見えるムーブメントや雰囲気が違ってきて当然なのです。

「絶対評価」は1組づつが踊り、その得点の多さで順位が決まる方法。カップルが繰り出す技の難易度により加点されていく、オリンピックでのアイススケートや体操競技の採点と同じく、得点としてその演技を評価する方法なのです。ですから、難易度の高い技をどんどん繰り出すべくトレーニングを積んで身体を鍛えていくことで、カップルの技の完成度を高めていくことになります。

一方「相対評価」の場合、ファイナルで見るように通常6組を同時に見比べながら順位を付けていきます。たとえベーシックフィガーであっても、カップルの存在感や時間の使い方、フットワークやアームワークなどの美しさ、強く見える動作などが最終的な決め手となり得るもので、審査員の採点が割れることがあるのも芸術的な側面が優先する故のこと。採点が割れることは、存在感のある美しいカップルのバトルであるからこそ生じるものなのです。ですから、その採点の集計方法としてスケーティングシステムという採点の平均値を割り出す方法が採用されているのです。

今回はプロ側のルールで競技が進められたとのことですが、そうであっても、私には正直なところ「異種格闘技戦」のダンス版を見るような思いです。同じ社交ダンスからの発展形ではありますが、評価の基本的考えが違うスタイルでのバトルであったと思わざるを得ません。

そして、現存するダンサーの誰が一番優れているのかという興味本位で開催したのであるなら、私はこのような競技会の開催には反対の姿勢を取ります。時代が移り変わっていく中で要求されるものが違っていくのは当然のこと。競技ダンスの発展の方向性をパワーやスピード、移動量や回転量などを追求し、メジャーなオリンピック競技に向けていくのもあり。そして、たとえベーシックフィガーであろうと、芸術としての琴線に触れる感動の一体感や音楽性を極めていく方向性の競技もあり、です。

ダンス界を盛り上げる方向でものを考えるなら、エキジビションマッチのような形で、どちらのスタイルも素晴らしいとするイベントにはできなかったのでしょうか?

(月刊ダンスビュウ2023年2月号掲載)

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プロフィール

  • 田中 英和

    生年月日:8月9日
    出身:広島県広島市出身
    経歴:1997年2月にアデール・プレストン選手とカップルを組み、5月の全英選手権で日本選手初の第3位表彰台に輝く。「ヒデ&アデール」の愛称で国内外の大会で活躍し、翌98年の全英選手権5位入賞を最後に現役を引退。以降、審査員、コーチャーとして後進の育成にあたっている。また、本誌でも、7年にわたって連載レッスン「ナチュラル・ダンシング」シリーズを執筆し、大好評を博した。
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