世界選手権 2カ月後に迫る!
遥か先のイベントのように思えていた「WDCプロボールルーム&ラテン選手権大会」が、あれよあれよという間に2カ月後に迫ってまいりました。世界選手権が日本で開催されるのは19年ぶりのこと、そしてボールルームとラテンの同時開催ということではなんと40年ぶりの開催なのです。その期待度は非常に高く、チケットもほぼ完売状態と聞きます。素晴らしい大会になることは間違いなく、世界のトップダンサーたちの白熱のバトルはさらにヒートアップし、大興奮の大会になることでしょう。
この世界選手権の最終的なエントリー締め切りは2025年8月29日(金)。8月末の時点で今回の出場全選手が確定することになります。全世界から多くのトップダンサーたちが幕張メッセに集結し、世界トップクラスのハイレベルなダンスバトルが繰り広げられるのですから、私自身も非常に楽しみにしています。
さらにこの世界選手権では、特筆すべきことがあります。何とファイナルで、日本インター式のソロ競技が採用されているのです。決勝に進出した世界のファイナリストたちが24小節の規定フィガーと24小節のフリーフィガーを1組ずつ踊るのですから、見ごたえ十分! これは必見です。種目はラテンはCha Cha Cha、ボールルームはTangoです。
さらにこの基本フィガーのアマルガメーションは、従来は英国ISTD刊行のBallroom Dance Techniqueを元に構成されていましたが、最近のWDCの規則改定により、ラテンはドニー・バーンズMBE氏&ハイディ・バーンズ女史が著した「Burns Latin Technik(B・L・T)」を、そしてボールルームはルディ・トラウツ氏が著した「The Art and Technique of Ballroom Dancing」を元に構成されたものになっています。時代が移り行く中で、ダンスのテクニックも少しずつでもその時代に即した改定がなされていくことも必要なことです。ダンスの普遍的な部分に何ら変革があるわけではありませんが、よりフリーにダイナミックに、そしておしゃれに踊られることが求められるのであれば、時代に即したテクニックが求められて然りです。
ラテンのCha Cha Chaは、従来よりファーストダンスとして競技されてきていますから、この種目でソロ競技がなされることに不思議はありません。それよりも「新しい教科書」によるフィガーの構成は非常に魅力あるものになっています。世界トップクラスのダンサーが繰り出すエネルギーやパワーや存在感を持って新しい感覚のアマルガメーションを踊るときに、どのような躍動が花開くのか想像するだけでもワクワクします。
ボールルームでは通常セカンドダンスとして競われるTangoを、ファーストダンスのソロ競技に持って来るというのは、大会をさらに盛り上げていこうとする、主催者の意向が見て取れます。競技の世界では、その勝敗に大きく影響するのはカップルのエネルギーレベルの高さにあります。タンゴはそれ自体が非常に強いダンスですし、さらに力強い音楽とパワフルなムーブメント、スタッカートなキレのある動きとしなやかな瞬間がある、実に色々な表情をもったダンスでもあります。新しいテクニックブックで構成された規定フィガーを、世界のトップダンサーたちがどのように攻略するのかとても楽しみです。
ちなみに今年で第46回を迎える「日本インターナショナルダンス選手権」が、世界選手権の前座として併催されるのですが、今回は日本インターのファイナルではソロ競技は行なわれず、決勝進出6組による通常競技として競われることになっています。
日本選手も、多くの選手が国内外のトレーニングキャンプに参加し実力アップを図り、中には海外での競技会に果敢にチャレンジし、実戦経験を積み、着々と準備を進めているカップルもいます。9月に入り2カ月を切るタイミングでは、選手の準備は最終段階に入っていくと思いますが、国内では9月の「JCFギャラクシーマスターズ」、10月には英国3大大会の一つ「ロンドンインターナショナル選手権」が開催されます。世界の強豪が集うこれらの大会などにも参戦し、彼らと競り合いながら自身の集中度を高めていく絶好の機会です。さらに地味なことではありますが、自身の目標を口に出して、自分に言い聞かせることも密かに日々継続していくべきことです。言葉には言霊というパワーが存在します。それを日夜自分に言い聞かせることです。
ダンスの競技では、まぐれで上手くなることも、まぐれで勝てることもありません。日々の不断の努力、継続が少しずつ自分を変え、レベルアップさせてくれるのです。あと2カ月しかないのではなく、あと2カ月もあると考えれば、できることはいっぱいあるはずです。日本開催という絶好の地の利を活かし、大いに勝負強いダンスで世界に挑んでほしいと思います。日本選手の健闘を祈ります!
(月刊ダンスビュウ2025年10月号掲載)