日本復活へのプロローグ
9月の「ギャラクシーマスターズ」から始まり、10月の「ロンドンインター」を終えて帰国後すぐの「世界選手権」と「日本インター」。その後の「地方インターシリーズ」の連戦、そして11月3日の「統一全日本」とビッグコンペが目白押し。さらに台湾での「ワールドカップ」や「シンガポールオープン」まで続くという、例年にないほどの競技会ラッシュを迎えました。もちろん国内ではJDSFの「三笠宮杯」も開催されています。まさに紅葉シーズンに負けず劣らず、ダンス熱で世界中真っ赤に染まった2025年の秋シーズンでした。
このシーズンを振り返ると、日本にとって待ちに待った嬉しいレポートをお届けできることを誇らしく思います。日本を引っ張るプロのチャンピオンダンサー2組が素晴らしい戦果を残してくれたのです。WDC世界選手権でファイナルに名を連ねたボールルームの福田裕一・エリザベスグレイ組とラテンの野村直人・山﨑かりん組です。
直前のロンドンインターでは、両カップルともロイヤルアルバートホールでのベスト30に食い込んだものの、セミファイナルには僅差で及ばず辛酸を舐めましたが、帰国後の世界選手権では見事ファイナル7位にランクイン! これは日本ダンス界にとって特筆すべき朗報です。
UK選手権やロンドンインターのセミファイナリストたちを抑えての初ファイナル入りは、心身ともに最高のコンディションで迎えることができたことの証でしょう。日本での開催という利点が背景にあったとはいえ、その利点を味方につける実力が身についていなければ、このような素晴らしい成績を残すことは不可能です。この大会に向けてベストを尽くしてきた不断の努力が身を結んだものと言えるでしょう。素晴らしいダンスで、このような結果をもたらしてくれたことを、皆で祝福しようではありませんか。本当におめでとう!
同日開催の日本インターでも福田・エリザベス組は外国勢を抑えての優勝を飾り、ラテンでは初日の世界選手権のファイナリストが軒並みエントリーをした中で、第5位に入賞した野村・山﨑組も賞賛に値する素晴らしいダンスであったと評価します。
さらに11月3日の統一全日本選手権でも日本のレベルが復活傾向にあると見てとれたことは、来年以降の日本人ダンサーたちの活躍に期待が持てます。その筆頭がこの両カップルです。彼らの進撃は止まることを知りません。研ぎ澄まされた感性と肉体の協調は終始他を圧倒する存在感を示し、私の目にはダントツの優勝を飾ったと見えました。彼らはついに世界が認めるレベルに達した、ワールドクラスのダンサーの仲間入りを果たしたと言えましょう。
以下、ボールルームでは2位争いも大激戦を展開。金野・井之口組がこのところの成長ぶりそのままに、隙のない美しいダンスで準優勝を遂げ、第3位に新カップルの廣島・大西組が躍動感溢れるパワフルなダンスで上りました。そして4位には、このところ大躍進を見せる景山・和田組が初ファイナルで進出。5位は小林・赤沼組、6位には昨年に続きJCFの山本・大吉組が名を連ねました。
ラテンでは野村・山﨑組の圧勝に続き、9月の世界ショーダンス選手権で優勝の快挙を達成した竹内・中島組が準優勝。第3位には近い将来を担っていくであろう八谷・皆川組。4位は鈴木・原田組、5位に初ファイナルの松岡・三橋組、そして6位に高野・加藤組が入賞しました。
来年度のWDC世界選手権の代表選手は、ボールルームが福田・エリザベス組と金野・井之口組、そしてラテンが野村・山﨑組と竹内・中島組に決定しました。来年も、さらに上位を目指して頑張っていただきたいと思います。
また、今大会で特筆すべきことに、統一全日本の名の下にJDSF-PD所属の廣島悠仁・大西咲菜組が参戦してくれたことを挙げたいと思います。彼らのエントリーにより注目度が爆上がりしましたが、JBDF、JCF、JDCそしてJDSF-PDの各団体からエントリーがあったことは、統一全日本選手権の存在意義を格段に上げたのも事実です。今後、個人的な意見ではありますが、団体の垣根を超えたこういった大会がさらに増えていくことを望みたいものです。
この流れは「強い日本」へのプロローグでもあります。素晴らしいきっかけとなったこの秋の勢いを無くすことなく、世界に通用する日本のダンス界の復活とその実現に向けて、さらに皆の力を合わせて進めていかなければなりません。
(月刊ダンスビュウ2026年1月号掲載)



