秋の競技会シーズンの到来です
酷暑だったこの夏。9月も下旬というのに、まだまだ暑さ厳しい日々が続いています。秋は一体どこへ行ってしまったのでしょう。地球の環境が変わってしまったのかもしれませんが、そうは言っても私たちの生活は絶えず次へ向かって動いています。上手に冷房機器を利用し、体力消耗を抑えつつ、目標に向かって進んでいただきたいと思います。
ダンスの競技でも、スタミナ面で勝負が決まる場合もよくあることです。私のメインコーチャーの一人であったソニー・ビニック先生も、競技において最終的に最も大事なものは「スタミナだ」と即答されていました。無駄な体力を使ってバテてしまうことのないテクニックは当然必要ですが、競技という場でのハイパワーなエネルギーを出し続けられる体力があることが大事なのです。普段の練習やレッスンの際にも、無駄な浪費をすることのないテクニックとともに、健康にダンスを楽しめる体調管理を心がけてほしいと思います。
今年も9月から11月にかけて、国内外でビッグイベントが目白押しです。幕開けとなるのは、JCF主催の「ギャラクシーマスターズ」です。日程は9月21日(日)。会場は「飛天」です。10月に入るとロンドンで「インターナショナル選手権」が開催されます。日本からも数多くの選手がこの大会に向けてイタリアや英国でのダンスキャンプに参加し、10月9日(木)のロイヤルアルバートホールでの本戦で戦うべく調整に励むことになります。そしてその翌週の10月18日(土)・19日(日)の両日、待ちに待った「WDC世界選手権」が幕張メッセで開催されます。併催競技として「日本インターナショナルダンス選手権」もあり、日本選手は勇躍帰国の途につき、世界レベルの戦いをロンドンから幕張へと場所を変えて続けていくのです。世界一を決する大会で、世界のトップダンサーたちの熱き戦い、そして日本選手のチャレンジ精神あふれる活躍も見逃せません。さらには、その流れでの名古屋、札幌、大阪、福岡で開催される地方インターも楽しみなシリーズです。そして10月25日(土)・26日(日)は東京でJDSF主催「三笠宮杯」も開催されます。代々木第二体育館を会場に、JDSFそしてJDSF-PD選手たちによる素晴らしいバトルが繰り広げられることでしょう。
そして11月3日(月・祝)には再び「飛天」においてNDCJ「統一全日本選手権」が開催されます。これは来年度のWDC世界選手権の日本代表選手を決定する大会ではありますが、NDCJ登録選手以外でも出場の機会が与えられており、国内のすべてのトッププロが一堂に会することができる非常に稀な大会として注目です。
アジア各国でも近年、非常に盛んに競技会が開催されており、私のところにも色々な競技会情報が飛び込んできます。そんな中で注目は、私も参加予定の11月8日(土)、台湾の台北アリーナで開催される「キングスカップ」と11月15日(土)・16日(日)開催の「シンガポールオープン選手権」です。
ここ数年のアジア地区における競技ダンサーのレベル向上は本当に目を見張るものがあります。かつてアジアの盟主であった日本の地位は、もはや中国にとって代わられた感が否めません。その中国ダンス界の勢いは政治経済の強さが背景にあるのは当然のことなのですが、舞踏学院と呼ばれる学校教育の一環としてダンス学校、アカデミーが中国各地で開校されており、学校教育の中にバレエ、ボールルーム、ラテン、中国フォークダンスなど専門に指導する教育機関が多数あるのは日本の学校教育システムとは大きく異なっているところです。台湾でも多くの大学のカリキュラムの中にダンスが取り入れられているそうで、ダンスのプロが大学講師として勤務している実例があります。若年層のダンス熱の高まりは、経済発展や国の政策にも左右される側面が浮き彫りになっているのではないでしょうか。
アジア各国の発展に伴って、ダンスのレベルは飛躍的に上がってきています。海外のトップコーチャーを招いてのコングレスやキャンプが頻繁に開催され、世界のトップクラスを交えての競技会も数多く開催されている現状があります。香港や韓国、中国の深訓、上海、北京だけでなく、今やタイ、インドネシア、フィリピンやベトナムなどの東南アジア諸国でも、ダンス熱はかつてないほど高くなっているのです。
11月の台北でのコンペもシンガポールのコンペも、ヨーロッパなどの世界のトップクラスも参戦する競技会ですが、地元の選手はもちろんのこと近隣の東南アジアのダンサーたちも数多く参戦することでしょう。アジアのダンス界の発展は、世界のダンスに大きく貢献していると言っても過言ではありません。そういった意味においても、これからさらにダンスを学校教育のカリキュラムに取り入れていくよう、積極的に働きかけていく必要があるのではないでしょうか。
まずは秋シーズンの日本選手の活躍を大いに期待したいものです!
(月刊ダンスビュウ2025年11月号掲載)