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田中英和先生のワールドダンス

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勘違い

日本人のインプルーブがなかなか現実味を持って表に見て来ない原因の一つに、「勘違い」というものがあるのかもしれません。ダンスを学ぶ際には必ず「良い姿勢」が求められます。その良い姿勢を作るときに「お腹を引き込み、首を伸ばしながら肩を下げる」という言い方がありますが、その良い姿勢を持っているにもかかわらず、ホールドというダンスを踊るポイズに発展していく過程で、胸を張り、肘をつっぱり、後ろにのけ反るような形になってしまう例を本当にたくさん見かけます。

トップダンサーのダンスを見ていると確かにそう見えますし、特に競技会ともなれば、一つでも上に勝ち上がりたいという思いからか、そのトップの大きさを作るべく極端な形を誇示するダンサーが多いのも事実です。トッププロが踊る強くも美しいスタイルはきっとこんな感じなのだろうと、思い込んでそういった形をとるのでしょうが、しかし、それは大きな「勘違い」と言わざるを得ません。

「お腹を引き込み、首を伸ばしながら肩を下ろす」という一連の動作は、良い姿勢を作るための一般的な言い方ですが、簡単に言うと『足の上に膝、腰があって、その上に肋骨、肩、頭がある』という骨格的に垂直の関係があれば良いのです。それは人間の骨格と筋肉のバランスにおいて非常に合理性のあるもので、普段の生活動作はもちろん、数あるスポーツにおいて共通した常識でもあるのです。

では、ダンスをする私たちが、なぜそういったやり過ぎとも言える形をとってしまうのでしょうか? それは見た目のシェイプをコピーすることから始まり、スポーツである以上、常識的に身体のストレッチが基本だという思い込み、それによってカップルのトップを大きくする努力、その次にボディのコンタクトがなくなってはいけないという恐怖などの感情が、ダンスを踊る際のカップルのスタイルを作っているのではないでしょうか。

スタンダードのダンスには常識的に5つのコンタクトがあると言われています。1)男性左手と女性の右手、2)男性右手首と女性左アームの付け根の下の部分、3)女性の左肘あたりと男性の右肘付近、並びに女性の左手と男性の右上腕部、4)男性の右手と女性の左肩甲骨のやや下あたりの背中、そして5)男性右ボディと女性の中央から左サイドにかけてのボディ。これら5箇所が男女共有のコンタクトポイントですが、これら5つ全ての意味を理解し、総合的に美しくもたくましいスタイルと女性をリードするにふさわしいホールドに作り上げていかねばなりません。女性も同様、これら5つの接点は安心してフルに踊るために必要なものなのです。

これらのコンタクトを介してナチュラルで伸びやかなダンスが目標となるのですが、そうならない理由は何なのでしょう? それこそ「勘違い」が存在しているからではないかと私は考えます。もはやダンスは競技でありスポーツなのですから、ストレッチは基本。それなくして勝因はないとばかりに、身体のあらゆるところに「間違った意味でのストレッチ(過緊張)」を加える傾向があるのではと考えます。表面的な強さをついついやってしまう、そんなことの繰り返しになっているのでは? 私は、その背景に、日本人の常識としての「気をつけ!」の習慣があるのではないかと考えます。

 

「胸を開く」「顎を引く」姿勢が、自由なダンスを妨げている!

学校教育で生徒の教育の一環として取り入れられている「気をつけ!」の姿勢。朝礼で全校生徒が整列して、「気をつけ!」「休め!」の号令とともに生徒全員が同じ姿勢を取るのは当然のことで、その姿勢を取りながら私たちは学生時代を送ってきたのです。

「気をつけ!」の姿勢は、目上の人に対する敬意を表した姿勢であり、しかもそれは軍隊などの規律を重んじるための行為でもあります。その姿勢は「直立不動」です(参考:ウィキペディア)。

その教育を受けた者が、真っ直ぐに脚を硬直させ、腰を伸ばし、胸を張って顎を引き、口をつむぎ、肘を突っ張る立ち方がダンスにも良いと信じ切っているのですから、競技ダンスで勝負に挑むときに、この姿勢を基本に考えるのは当然のことなのかもしれません。

特に「胸を開く」「顎を引く」という部分が、私たちのダンスにおいて大きな勘違いの部分であると言えます。それは何のため? それは「直立不動」のためなのです。それで自由なダンスができますか? 答えは簡単。NOです。顎を引いて胸を開くと、両方の肩はかかとの上に位置するようになります。このかかとの上に肩が来る姿勢は、それだけでバックウエイトであり自分自身の膝に負担を強いる姿勢。その緊張した状態で男女がシェイプを作り我慢のホールドをとった場合、どんなことが始まるか、想像に難くありません。

要するに「気をつけ!」の姿勢ではなく、「身体を楽にして、足のボールの上に肩がある」ときが自然な姿勢であり、膝に全く負担がかからないのですからもっと自由に踊れるのです。

日本の学校教育が間違っているということではありません。そこにある習慣と、私たちのダンスへのアプローチを混同させることを嫌うだけなのです。このことを踏まえ、男性のたくましくも合理的なスタイル、女性のフォローに適したシェイプが自然なトップの広がりのアプローチになり、男性の確実で力強いムーブメントのリードに女性のエレガントで美しいフォローが加わり、踊るもの、見るものに夢を与えるのです。そんなダンスが、文化やマナーとしての広がりをもたらすのではないでしょうか。

 

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プロフィール

  • 田中 英和

    生年月日:8月9日
    出身:広島県広島市出身
    経歴:1997年2月にアデール・プレストン選手とカップルを組み、5月の全英選手権で日本選手初の第3位表彰台に輝く。「ヒデ&アデール」の愛称で国内外の大会で活躍し、翌98年の全英選手権5位入賞を最後に現役を引退。以降、審査員、コーチャーとして後進の育成にあたっている。また、本誌でも、7年にわたって連載レッスン「ナチュラル・ダンシング」シリーズを執筆し、大好評を博した。
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