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田中英和先生のワールドダンス

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「歴史の中の名門スタジオ」

私がプロとして英国での留学を始めたのは、今から31年前の1988年。その当時、ビル&ボビー・アービン先生(故人)主宰の「スターライトダンススタジオ」は、1月のUK戦や5月のブラックプール、10月のインターナショナルといったメジャー大会の前はもちろん、競技シーズンではない3月から4月にかけてや8月でも、世界から集まるトップダンサーたちでごった返していました。

それはスターライトだけでなく、ロンドン南西部を中心とした英国のダンススタジオはどこも同じで、ボブ・バージェス先生(故人)&ドーリン・フリーマン先生の「グラフトン・ボールルーム」、ベニー・トルメイヤー先生(故人)の「ベニースタジオ」、マイケル・ステリアーノス&ローナ・リー先生の「トップ・オブ・ザ・フロアスタジオ」、ピーター・マクセル先生の「セムリー・ソーシャル」、ニーナ・ハント先生(故人)の「ニーナスタジオ」、そしてロンドン郊外にあったアンソニー・ハーレー先生の「ダンスワールド」など、英国ダンス界の名門スタジオにはダンサーが大挙して押し寄せ、ダンスの奥義の探究に明け暮れていたものです。

当時、私のメインコーチャーの一人であったソニー・ビニック先生(故人)がレッスンしていたのが、ロンドン市内西部にあった「ハマースミス・パレー」という、かつてUK選手権が開催されていた会場でした。私がまだアマチュアの頃、ビギンダンス教室のオーナー久保文子先生(故人)から「このビデオは今年のUK選手権の録画だよ。今の世界最高のダンスが観られるから、今晩観て勉強しなさい」と。このときの会場がハマースミス・パレーでした。

ちなみに、そのビデオに映し出されたアマラテンチャンピオンは、デヴィッド・グリフィン(故人)と、なんと現在私の妻であるアデール・プレストン組! 当時まだアマチュアC級選手だった私は、オナーダンスで可憐に舞うアデールに見惚れていたものです!

話が脱線してしまいましたが、ハマースミス・パレーは1985年の大会後に閉鎖となり、UK選手権は翌年から英国南西部の観光都市、ボーンマスのインターナショナルセンターに会場を移したのです。ソニー先生もPutneyのエリック・ドナルドソン(故人)スタジオに移り、それも今はありません。ベニースタジオも、トップ・オブ・ザ・フロア、ニーナスタジオ、ダンスワールド、セムリー、そしてリチャード・グリーブ先生の「キングストンスタジオ」まで、時の流れの中でなくなってしまいました。その時代にダンスに夢中になった世代からすると、寂しさを隠すことができません。

過去の集大成・現在のダンスを知るためには、「歴史を知ること」も未来に向けた大事な側面

しかし一方で、時代が移り行く中で、スターライトはマーカス&カレン・ヒルトンを筆頭に多くのトップコーチャーを擁し、グラフトンも次の代へと受け継がれ、そして、現在英国でもっとも大きな存在となっているCheamの「ダンスオプション」では、リン・ハーマン、デビッド・シカモア&デニース・ウィーバース組、ケニー&マリオン・ウェルシュ組らの経営により、多くの世界レベルのコーチャーが集っています。セムリーの後は「マチコ・スタジオ」がそれに代わり、マシュー・カトラー、ブライアン・ワトソン、ハンス・ガルケ、カルメンなどラテンのスペシャリストが集結し、ラテンダンスのメッカになっています。ジョン・ウッドやロレイン・バリーなどが名を連ねるPutneyの「ダンスラボ」も、競技ダンサーの集まるスタジオの一つとして挙げられます。

今のダンサーは、今のダンスを極めることに命を懸けているのですが、今のダンスは、これらの歴史を積み上げた結果として存在するのです。歴史とは単なる「栄枯盛衰の経緯」やノスタルジックな「回顧録」だけではなく、歴史を勉強すること、歴史を知ることの意味は「今を知り、次への取り組みの参考にする」ことです。「現在は過去の出来事の集大成」として存在するのですから、過去をないがしろにすると、現在の姿を見誤ってしまうこともあるのです。

ブラックプールも6年後の2025年には100周年を迎えますが、これまでの94年の歴史の中で実に素晴らしい発展を遂げてきたことは事実で、代々チャンピオンたちのスタイルの変遷やバトルなどに興味を持つことも、意味のあることではないでしょうか。

カリスマ的グレートダンサーを数多排出してきた英国の名門スタジオ。過去の偉大なるダンサーたちが極めてきた「本物のダンススタイル」は、この歴史の中の名門スタジオで育まれてきたのです。

「命続く限り好奇心を持ち続ける」ことが進歩の基本であり、過去の集大成・現在が生まれた背景の「歴史を知ること」も、未来への展望につながる大事な側面と考えます。

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プロフィール

  • 田中 英和

    生年月日:8月9日
    出身:広島県広島市出身
    経歴:1997年2月にアデール・プレストン選手とカップルを組み、5月の全英選手権で日本選手初の第3位表彰台に輝く。「ヒデ&アデール」の愛称で国内外の大会で活躍し、翌98年の全英選手権5位入賞を最後に現役を引退。以降、審査員、コーチャーとして後進の育成にあたっている。また、本誌でも、7年にわたって連載レッスン「ナチュラル・ダンシング」シリーズを執筆し、大好評を博した。
    田中英和ダンスワールド

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