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田中英和先生のワールドダンス

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今だからすべきこと

変異種の感染拡大など新型コロナウィルスが未だ封じ込められていない状況にあり、まだ当分、厳しい制限の中で生活していかなければならないのが現実なのでしょう。しかし、プロ野球などプロスポーツの世界や、宝塚歌劇や劇団四季など演劇界では、感染予防の厳しい指針に従った取り組みにより、感染者を出すことなく催し物が行なわれています。この春、各地で開催されたダンス競技会やパーティでも、主催者側の感染防止対策の徹底により、クラスターが生じたという事例は聞いていません。
 もちろん今後の感染状況次第では競技会の開催も影響を受けてしまうのでしょうが、競技に向かうダンサーとしては、いつでも最高のパフォーマンスができる状態にしておきたいものです。現状、競技会を重ね、勝手に身体が反応するほど踊り込んだ状態になることは考えられません。私の言う最高の状態とは、心技体が「三位一体」の状態にあること。つまり、効率良く短時間で、無駄なくパワフルに踊れる「準備ができている」ことを意味します。今回はこの状態を確立する考え方をご紹介します。
 まず「体」。これは美しい「骨格」が基本。足の上に骨盤があり、肋骨、首、頭と下から綺麗に積み上げた骨格を持つことです。その骨格に張り付くように存在するインナーマッスルは非常に強靭でとてもしなやかなものです。背骨が長くなったような感覚でボールバランスに立てるのも、この美しい骨格と強靭なインナーマッスルの仕事で、そのままゆったりと背骨をしならせることができれば、見えない部分での準備は完了です。その美しいスタイルにトーションと言われる身体の絞りを加えるのが、アウターマッスルの仕事。男性は軸足である右脚に、女性は左脚に重心を移しつつ、身体の中心であるおへそを相手の方に向けながら、ウエストを引き締め、ホールドの両手の平を外に向けるような動作、左右の肩甲骨を交互に背骨に近づけるような運動などが合わさってくることで、真っ直ぐな美しい姿勢、粘りと張りのあるボディと大きなホールドを生み出します。
 次に「技」。ダンスには色々な技が存在しますが、私がここでいう技とは「基準」となるものを作り出す技。例えば、大きな会場へ行くと、バランスを失って普段通り踊れない選手がたくさんいます。それは目に入ってくる会場の大きさに自身の感覚が狂ってしまうから。どんな会場へ行こうとも、自分の中にぶれることのない基準があれば、そんな事態はなくなります。その基準とはズバリ、建築物に必ず存在する柱や壁などの「垂直」と、古代ローマのアルキメデスが発見した「てこの原理」です。
 まず垂直なものに自分の背中を合わせ、そこからおおよそ5cmから10cm離れてみます。心地よくボールに圧が加わったところが、基本となるボールバランス。前傾にならないように膝を少し緩め、脛のあたりがつま先の上に位置するくらいになると、足首にしっかりした感覚が生まれてきます。脛の場所を「力点」と考え、「てこの原理」を利用して足元のバネを生み出すことが、力強くスムースに踊るための基礎。前進でも後退でも、ライズから降りようとも、足元の「てこの原理」により、身体の真っ直ぐを維持しながらボールバランスに立てる「技」を磨くことが大切なのです。
 もう一つ大事な「技」は、男性がどんなフィガーを踊ろうとも、女性の両肘にある均等なバランスに悪影響を与えないという技です。そのバランスによって女性は肩甲骨の動きを作ったり、フットワークの美しさなどに展開していけるのです。この技は、男性のしっかりとしたホールドを生み出す基準にもなり、絶対にマスターしておかなければならないものと言えます。
「心」――それは芸術の世界ではよく指摘されます。例えば歌心。そこには歌詞の理解の深さや情景を歌い上げる感情が大きく作用していると思います。フィガーやコレオグラフィーも、ある意味、歌詞と同じ。そのフィガー自体の理解や流れの中の強弱や緩急などを理解し、音楽を身体中に取り込んで、ゆったり、大きく、繊細に、大胆に始動することができれば、パートナーとともにプラスαの存在感を生み出すチャンスが大きく膨らむのです。
 ダンスとは、美しいカップルのバランスをほんの少し壊すことをきっかけに始まり、エネルギーはどんどん高まっていくのですから、この「心技体」の基準を身につけることは、とても意味あることなのです。次へのレベルアップのベースでもありますから、ぜひこの時期に一度取り組んでみてはいかがでしょう。

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プロフィール

  • 田中 英和

    生年月日:8月9日
    出身:広島県広島市出身
    経歴:1997年2月にアデール・プレストン選手とカップルを組み、5月の全英選手権で日本選手初の第3位表彰台に輝く。「ヒデ&アデール」の愛称で国内外の大会で活躍し、翌98年の全英選手権5位入賞を最後に現役を引退。以降、審査員、コーチャーとして後進の育成にあたっている。また、本誌でも、7年にわたって連載レッスン「ナチュラル・ダンシング」シリーズを執筆し、大好評を博した。
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