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田中英和先生のワールドダンス

コラム&本誌企画

スウィング

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今現在、ボールルームダンスは5つのダンスが規定されています。ワルツ、タンゴ、ウィンナーワルツ、スローフォックストロット、そしてクイックステップ。そして、そのうちタンゴ以外を「スウィングダンス」として捉えられています。

スウィングダンスは、ライズ&フォールのある優雅なムーブメントで踊られるダンスです。特にテンポのゆったりしたワルツやスローフォックストロットなどは、ダンスパーティーでもよく踊られる、とっても華やかなものです。

さて、このスウィングとは? 最も平たく言えば「ブランコ」のことで、高いところから次の高いところまでを一つの振り子のようなムーブメントで移動することからスウィングダンスと呼ばれるようになったのであろうと思います。ワルツを例に挙げれば、1歩目の終わりからライズが始まり、2歩から3歩目にかけてライズを継続する動きが、まるでブランコのような軌道を描いているイメージを持つと分かりやすいと思います。

このようにライズ&フォールのあるムーブメントをブランコのような加速で踊るためには、「身体の自由な運動」、すなわち「振りの動作」としてのスウィングが肝心になってきます。身体の自由な運動である「振る動作」といえば、腕や脚がまず挙げられます。姿勢を良いままに、腕や脚の振りを利用してスウィングダンスの練習をすることは、とても効果的なものと言えます。

腕を振るタイミングとロアからの第1歩目のタイミングが合ってくると、腕の重さや脚の重さが感じられるようになります。前進のフィガーでも後退のフィガーでも右回転でも左回転でも、自在に進行方向に振ることのできる能力が身に付けば、ムーブメントの質は相当に上がっていると言えます。

さらに足元にある自由な運動も見逃せません。それはフリック(Flick)という動作です。これは膝下の振りのことで、特にスローフォックストロットで非常に大切な動作となります。典型的な例は男性のスリーステップの第1歩。第1クイックの右足のステップがまさにフリックの動作です。この右足のフリックとライズの動作が右サイドリーディングとともに踊られる時は、ボディーフライトを楽しむ瞬間であり、燕尾服を着た男性が最も美しく見える瞬間でもあります。この瞬間のために男性はダンスの練習に勤しむと言っても過言ではありません。この右足第1歩を、フリックの動作から右足の上で完璧なポスチャーで立つことができれば、第2歩目左足前進(TH)で緩やかに下りていきながら、最終歩のSタイミング=次のナチュラルターンの第1歩への加速に繋がっていくのです。フリックの動作は、美しく力強いスウィングのあるムーブメントには欠かせない動作と言えるのです。

参考までに、スローフォックストロットでフェザーステップやフェザーフィニッシュ(タイミングはSQQS)の後にスリーステップを踊る場合は、このフェザーの最終歩のSのタイミングをTHのフットワークで踊りますから、スリーステップの第1歩のフットワークはHTとなり、HTで踊られるステップが2歩続くことになります。2歩HTのステップが続くこのパターンはスウィングダンスにおいての例外的存在です。これはまるでタンゴのウォークとよく似ていると言われます。

そのタンゴに話を変えましょう。バンドネオンやバイオリンでスタッカートの効いた音楽を背景に踊られるタンゴは、ライズ&フォールのテクニックを用いないためにスウィングダンスのグループには含まれないのですが、ムーブメントにスウィングはないにしても、身体の自由としての「振る」動作はタンゴにも存在するのです。それは「膝から下の振り」、フリックです。タンゴのリズムでウォークをする時も、ステップする足をフロアに置くのではなく、ボールのフロアへのプレッシャーをしばらく残したまま、重心が送り足の上から進行方向へ離れていき、中間バランスに到達する直前に膝から下がフリックされ、ヒールからステップされるという結果に繋がります。

スローフォックストロットのスリーステップもタンゴの基本タイミングもQQSと同じで、しかも両方ともフリックの動作をするという共通項があっても、一方はスウィングダンスで他方はスウィングダンスではありません。その理由は、スリーステップは4拍子で単なる前進動作をしながらライズをするため、右サイドリーディングでスウィングの加速を持って通過するのに対し、タンゴの場合はボディの下で両足は左へ1/8向いており、足の位置関係がCBMPになっているため、ボディが足の上を加速して通過しないからです。しかし、同じフリックの動作で踊るタンゴウォークは、スリーステップの練習をする際にはとても有効であろうと思います。

また、意外なことに、身体の最も上にあるスウィングは「頭」にあります。姿勢を良くする場合、この頭蓋骨のスウィングが非常に大事になります。これは頭全体を「前方の上(Forward and Up)」にスウィングさせる動作を言います。これは、頭蓋骨の重心はこめかみのやや上の中央寄りで、頸椎との関節があるのは耳たぶの裏の少し凹みのあるところ、頭の重心は関節よりやや前にあります。ですから、「頭を前の上にスウィングさせる動作」によって関節が頭の重心の下に移動することになり、身体全体の骨格のバランスもボールの上にくるのです。そして、それによってネックラインも綺麗になり、肩の力も抜けやすくなります。脚も綺麗に伸びやすくなり、腹筋や背筋をはじめ様々な筋肉も自然に反応を始めるのです。

良い姿勢の代表に「気をつけの姿勢」がありますが、これはアゴを引いて頸椎との関節に重さを合わせる方法。直立不動の姿勢を作る場合には非常に有効ですが、自由を求めるダンスの場合には不向きと言えます。頭全体を「前の上」にスウィングさせることを覚えれば、スウィングダンスはさらに輝きを増すこと間違いなしです!

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プロフィール

  • 田中 英和

    生年月日:8月9日
    出身:広島県広島市出身
    経歴:1997年2月にアデール・プレストン選手とカップルを組み、5月の全英選手権で日本選手初の第3位表彰台に輝く。「ヒデ&アデール」の愛称で国内外の大会で活躍し、翌98年の全英選手権5位入賞を最後に現役を引退。以降、審査員、コーチャーとして後進の育成にあたっている。また、本誌でも、7年にわたって連載レッスン「ナチュラル・ダンシング」シリーズを執筆し、大好評を博した。
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