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田中英和先生のワールドダンス

コラム&本誌企画

勘違い3

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思い込みからくるちょっとした「勘違い」が、順調な上達を邪魔している可能性は否定できません。前回、前々回の号でいくつかの勘違いの可能性をご紹介しましたが、今回は一般的によく踊られるテレスピンとスローアウェイオーバースウェイを例に挙げて、そこに見られる「フィガーの理解における勘違い」に触れてみたいと思います。

まずはテレスピン。競技会やデモンストレーションで、ワルツやタンゴのバリエーションとして踊られる人気のフィガーです。が、女性をより遠くに走らせながら振り回すように左回転のスピンをする危険なダンスを見かけることがあります。これも、勘違いがそうさせているのではないかと考えます。

そもそもテレスピンの元になっているベーシックフィガーは、実はスローフォックストロットの美しいリバースターンなのです。男性・第2歩目横へのステップが通常のリバースターンの2歩目よりも少し大きくなることで、ヒールターンをした女性の3歩目から4歩目が男性のインラインにステップされず、男性の左サイドを女性が通過することによって、それを修正すべく男性が3歩目の左足ボールで左回転のスピンを踊り、男女が向き合う位置関係に戻ります。男性4歩目後退からフェザーフィニッシュに続けるのがオリジナルですが、もちろんスローアウェイオーバースウェイのようなピクチャーポーズに続けることもできる、とても美しい流れを持ったフィガーです。

しかし、「このバリエーションの元になったベーシックフィガーは?」と聞くと、「オープンテレマークです」と答えるダンサーが、実際とても多いのです。ですから、オープンテレマークの女性の動作であるヒールターンからPPに開いたところで、より遠くにスピンをするフィガーだと勘違いをしてしまうのでしょう。そもそもテレマークとは冬季オリンピックの花形、スキージャンプの着地の姿勢を言うもので、両足を前後に開いて着地することを指します。ヒールターンの動作を意味するものでもないのです。テレマークというフィガーの理解にも勘違いが存在しています。

 

スローアウェイオーバースウェイは、ゆっくり離れる大げさなスウェイ?

そして、テレスピンからのフィナーレとして踊られるピクチャーポーズの代表としてスローアウェイオーバースウェイがあります。まずスローアウェイの部分ですが、英語表記をするとThrow Awayとなります。「ゆっくり離れる」Slow Awayではないのです。「投げ出す」「放り出す」などの意味で使う単語で、女性の左足が男性の向こう側に放り出される動作のことを言います。そしてオーバースウェイも勘違いしやすい部分です。オーバーとは決して「大げさな」とか「度を超えた」という意味ではなく、「〜の上に」という意味であると理解することです。つまり「女性のショルダーラインの上に傾き(スウェイ)があるフィガー」という意味であり、「大げさなスウェイ」ではないのです。

男性は後退回転の内回りで踊るフィガーですから、次の方向へつま先を向けるという回転動作であり、その方向への身体の回転を混ぜるべきではありません。「大げさなスウェイ」は女性に過度な負担を与え、マナー違反であり、時に危険なことでさえあります。

踊り方としては、まず男性は左回転でLOD上に横にステップ。左足のつま先が壁斜めにポイントされ、右足トウのインサイドエッジまで綺麗に伸びたラインで下半身を安定させ、LOD上で横への水平移動。身体の回転動作は最小限にし、女性のショルダーに傾きを加えていきます。女性は右足ボールでのスイベルの回転動作から、左足のステップ、男性のスウェイの動作によって顔の向きを変えるという展開になります。

もう少し具体的に説明すれば、女性は男性の左足と向き合うように右足のボールでスイベルしますが、この時はまだ身体の回転も少なく、顔の向きも右のままです。男性の水平移動によって、横にステップした左足にさらに重心が移動することで、女性の左足がLOD側にスローアウェイされ、トウのインサイドエッジまで綺麗に伸びていきます。この段階ではまだ女性に傾きはありませんし、顔の向きもまだ右のままです。ここからオーバースウェイの動作に展開していきます。フィナーレに持っていくために男性は胴体の回転をすることなく、自身の頭の位置を「右後ろ上」に移動させることです。この動作によって男性下半身の安定を失うことなく、アッパースパイン(胸椎)から右ショルダー、アームにかけての表情としてのスウェイになり、女性の顔の向きが左へ変化、左ショルダーに見えるスウェイに繋がっていきます。

今回ご紹介したテレスピン、オーバースウェイはとても人気のあるフィガーであり、普通に踊られるものですが、今一度、この基本的なシステムへの理解が加われば、新たな上達の扉が開かれることでしょう。競技会では高いエネルギーレベルやシェイプの大きさ、深さ、スピードなどが求められます。理解ができたら、自分たちの納得のいくエネルギーレベルを持って、理想的でダイナミックなシェイプやバランスで踊れる建設的な練習を続けていくことです!

 

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プロフィール

  • 田中 英和

    生年月日:8月9日
    出身:広島県広島市出身
    経歴:1997年2月にアデール・プレストン選手とカップルを組み、5月の全英選手権で日本選手初の第3位表彰台に輝く。「ヒデ&アデール」の愛称で国内外の大会で活躍し、翌98年の全英選手権5位入賞を最後に現役を引退。以降、審査員、コーチャーとして後進の育成にあたっている。また、本誌でも、7年にわたって連載レッスン「ナチュラル・ダンシング」シリーズを執筆し、大好評を博した。
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