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田中英和先生のワールドダンス

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「新たな非日常へ」

 日本国内は第1波の抑え込みに成功した安堵の雰囲気が漂っています。抗体やワクチンなどの研究も急ピッチに進められているニュースと同時に、来るかもしれない第2波への的確な対応ができる準備も始まっているようで、収束に向かってうまく舵を切っているのではないかと私自身もちょっと安心しています。もちろん油断をしてはいけませんが、この4カ月にわたる厳しい生活から、徐々に明るい方向に動き始めていることを素直に喜びたいと思います。
 無観客ではあってもプロ野球の開幕や甲子園での高校球児のための交流試合開催のニュースは、世の中をとっても明るくしてくれています。ダンスの世界も開催方法を工夫する必要はあるでしょうが、この秋シーズンに競技会を開催できることになれば本当に嬉しく思います。
 今回のコロナ禍で、テレワークという言葉が「新しい日常」として盛んに使われるようになりました。AIなどの最新技術の発展、それを活用する企業努力などが世の中の動きやその有り様を変え始めています。会議にしても、ZOOMをはじめとする色々な媒体がビデオ通話によるウェブ(リモート)会議を可能にし、遠距離移動をすることなくライブで会議に出席できるようになっています。 
 ダンスのレッスンも、今では盛んにインターネットの活用で技術の解説が発信されるようになっています。ZOOMを使ってのライブでのウェブレッスン、動画を録画してメールのやり取りでレッスンをする動画レッスンも徐々に広まっているようです。オンラインでの競技会の開催が模索されていることも見逃せません。今後「新しい日常」としてますます定着していくのかもしれません。
 そして今の世の中、YouTubeなどで素晴らしい映像を自由に見ることができます。ダンスというものは見て楽しむところから始まるものですから、実際に見ることで興味に繋がっていきます。自宅に居ながら美しいダンスを見る楽しさを味わえることは本当にありがたいことです。そしてこのインターネットを通じて、正しい知識を映像で入手することも可能な時代です。時間の有効利用をしつつ、レベルアップのベースを確立できることはとても有意義なことだと思います。

ダンスを見ることによって気付かされる非日常の「空間芸術」としての美しさ!

 そして、素晴らしいダンサーのダンスを見ると、スマホやパソコンなどの小さな画面に映る映像であっても、素晴らしいダンスはやはり「上手いな〜」と感心するものです。私たちが素晴らしいと感じるダンス、そこには不自由さが全く存在しない「非日常」がある、と言えるかもしれません。人格の違う二人の人間が向き合った状態で不自由なく一体の動きを生み出すこと自体、日常の生活の中ではまずあり得ないことでしょう。だからこそ、そこに魅力を感じ、そんな瞬間を体感したときにダンスの魅力の虜となってしまうのです。スタイルやホールドを維持する努力も見えず、足捌きとしてのフットワークにも無駄はなく、まるでフロアという鍵盤を足で奏でているかのようです。
 かと言って、運動神経の良さから来る、筋肉の躍動が前面に出ているような作為的な動作でないことも事実です。私たちが望むダンスのスタイルは、カップルが織りなす何とも言えないフロア上の波やリズムを作り出すような、そんな日常とは違うムーブメントに酔いしれるのです。カップルの存在自体が自然であり、音楽であり、ダンサーが織りなすムーブメントが音楽を引っ張って行くような勢いもあり、肉体に見える躍動もさることながら、それ以上にカップルの生み出す空間が艶々している、いわば「空間芸術」のようなものなのです。
 競技会でも予選の段階からフルパワーで踊ることが要求されますが、そのフルパワーとは、フェザーステップを踊ろうとルンバベーシックを踊ろうと、1拍、2拍や1小節、2小節といった一定の時間の中で自分の周囲にある「空間を支配」し、その空間を変化させることで躍動を生み出し、そしてカップルのムーブメントとなるのです。そんな瞬間が「非日常」のダンスを、更に「新たな非日常」へとレベルアップさせる瞬間でもあると私は感じています。
「ダンスの美しさは踊り手の背中の美しさ」という見方もあります。素晴らしいダンサーたちの空間へのアプローチや、背中の美しさにも注目して見ていただければ、また違った感覚でダンスを楽しむきっかけになるでしょう。そしてダンスを踊る際にも、空間への意識を持つと、また違ったレベルで踊れるようになるのではないでしょうか。

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プロフィール

  • 田中 英和

    生年月日:8月9日
    出身:広島県広島市出身
    経歴:1997年2月にアデール・プレストン選手とカップルを組み、5月の全英選手権で日本選手初の第3位表彰台に輝く。「ヒデ&アデール」の愛称で国内外の大会で活躍し、翌98年の全英選手権5位入賞を最後に現役を引退。以降、審査員、コーチャーとして後進の育成にあたっている。また、本誌でも、7年にわたって連載レッスン「ナチュラル・ダンシング」シリーズを執筆し、大好評を博した。
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